AI規制とは?日本と世界の動向・企業が取るべき対応を解説

AI規制のニュースを目にするたびに、自社のAIの使い方が法律に触れないか不安になる方も多いのではないでしょうか。日本と海外でルールが違うと聞いても、何がどう違い、自社に関係があるのかを判断できない場面もあるはずです。
この記事では、AI規制の意味・日本の規制・EUの規制・米国と韓国の動向・日本企業が取るべき対応を、各国の政府機関の公式情報とジェトロの報告に沿って解説します(2026年10月4日時点)。
記事を読めば、自社がどのルールを確かめ、何から対応すればよいかが分かる状態です。結論は、日本のAI規制は活用の推進が中心で、EUは義務と制裁金を伴う厳しい規制です。まずは自社で使っているAIを把握し、ガイドラインに沿って社内のルールを整えましょう。
AI規制とはAIの開発と利用に関するルール
AI規制の基本は、以下の3つで押さえます。
- 法律とガイドラインの2つの形がある
- 国や地域によって規制の強さが違う
- 既存の法律もAIの利用に適用される
法律とガイドラインの2つの形がある
AI規制は、AIの開発・提供・利用に関するルールです。義務や罰則を定める法律と、自主的な取り組みを促すガイドラインの2つの形があります。
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは、法的な拘束力のないソフトローと位置づけられています。細かな義務を法律で定めると、イノベーションを妨げるおそれがあるとの考え方です。
国や地域によって規制の強さが違う
主な国と地域の規制の方向は、以下の表のとおりです。
| 国・地域 | 主なルール | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本 | AI法・AI事業者ガイドライン | 活用の推進が中心で自主的な取り組みを促す |
| EU | AI法 | リスクに応じた義務と制裁金がある |
| 米国 | 大統領令・各州の法律 | 連邦は規制の緩和・州ごとに規制が分かれる |
| 韓国 | AI基本法 | 産業の育成と信頼の確保を定める |
既存の法律もAIの利用に適用される
AI専用の法律がなくても、既存の法律はAIの利用に適用されます。個人の情報を扱うときは個人情報保護法が、文章や画像を生成するときは著作権法が関係します。
AI規制を考えるときは、AI専用のルールと既存の法律の両方を確かめることが基本です。
日本のAI規制
日本のAI規制は、以下の4つで押さえます。
- AI法は2025年9月に全面施行された
- AI法は活用の推進を目的にしている
- AI事業者ガイドラインが実務の指針になる
- 個人情報保護法や著作権法が適用される
AI法は2025年9月に全面施行された
日本のAI法の正式な名前は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律です。内閣府によると、2025年6月4日に公布され、同年9月1日に全面施行されました。
2025年12月19日には、AI法にもとづく指針が決定されています。AIに関わるすべての主体に、適正な研究開発と活用への自主的な取り組みを促す内容です。
AI法は活用の推進を目的にしている
日本のAI法は、AIを規制するよりも、活用を推進する性格が強い法律です。政府による基本計画の策定や、権利や利益の侵害が生じた事案を国が分析し、事業者に指導や助言を行うことが定められています。
条文に、違反に対する罰則の規定はありません。罰則がないからといって、何をしてもよいわけではありません。
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AI事業者ガイドラインが実務の指針になる
実務で参照するのは、総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインです。2024年4月に策定され、2026年3月に第1.2版が公表されました。
AIを開発する事業者・提供する事業者・利用する事業者に向けて、安全性・公平性・プライバシーの保護・透明性などの指針を示しています。AIを業務で使うだけの会社も、対象に含まれます。
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個人情報保護法や著作権法が適用される
AIに個人の情報を入力する場合は、個人情報保護法のルールを守る必要があります。AIが生成した文章や画像が他人の著作物に似ている場合は、著作権の侵害になるおそれがあります。
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EUのAI規制
EUのAI規制は、以下の5つで押さえます。
- AI法はリスクを4段階に分けて規制する
- 禁止されるAIの使い方がある
- 高リスクのAIには厳しい義務がある
- 違反には高額の制裁金がある
- EUの外の会社にも適用される場合がある
AI法はリスクを4段階に分けて規制する
EUのAI法は、2024年8月1日に発効した、AIに関する世界で初めての包括的な法律です。欧州委員会によると、AIのリスクを4段階に分けて規制します。
- 許容できないリスクは禁止する
- 高いリスクには厳しい義務を課す
- 透明性のリスクには表示の義務を課す
- 最小のリスクには義務を課さない
2026年8月2日から、一部の例外を除いて適用が始まっています。
禁止されるAIの使い方がある
人の安全や権利への明らかな脅威とされるAIの使い方は、禁止されています。有害な操作やだまし・人を点数で評価するソーシャルスコアリング・職場や教育の場での感情の認識などです。
禁止の規定の多くは、2025年2月から適用されています。同じ時期に、AIリテラシーに関する義務も適用が始まりました。
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高リスクのAIには厳しい義務がある
健康・安全・基本的な権利に重大な影響を与えるおそれのある用途は、高リスクに分類されます。採用での応募書類の選別・試験の採点・融資の審査などが例です。
高リスクのAIには、リスクの評価・データの品質の確保・記録の保存・人による監督などの義務が課されます。採用や教育などの分野の規定は、2027年12月2日から適用される予定です。
違反には高額の制裁金がある
EUのAI法には、制裁金の定めがあります。禁止されたAIの使い方に違反した場合は、最大3,500万ユーロです。会社の場合は、世界全体の年間売上高の7%と比べて、高いほうが上限になります。
ほかの義務への違反にも、最大1,500万ユーロか売上高の3%の制裁金が定められています。
EUの外の会社にも適用される場合がある
EUのAI法は、EUの中に拠点がない会社にも適用される場合があります。EUの市場にAIを提供する会社や、AIの出力がEUの中で使われる場合の提供者と利用者が対象です。
EUに顧客がいる日本企業は、対象になるかを確かめる必要があります。
米国と韓国のAI規制
米国と韓国のAI規制は、以下の3つで押さえます。
- 米国の連邦政府は規制の緩和を進めている
- 米国は州ごとに規制が分かれている
- 韓国はAI基本法を制定した
米国の連邦政府は規制の緩和を進めている
ジェトロによると、米国のトランプ大統領は2025年1月23日に、AIに対する規制の緩和を指示する大統領令を発表しました。前の政権の大統領令にもとづく政策を見直す内容です。
2026年6月2日には、最先端のAIのモデルの公開の前に、連邦政府が最大30日間審査できる枠組みを作るよう指示する大統領令に署名しています。開発する会社に求める内容は、自主性にもとづくとされています。
連邦のレベルでの網羅的なAIの規制は存在しない、とジェトロが説明している点も米国の特徴です。
米国は州ごとに規制が分かれている
米国では、州が独自にAIの規制を導入しています。ジェトロによると、ユタ・テキサス・カリフォルニア・コロラドの4つの州で、包括的なAIの規制が制定されています。
トランプ大統領は2025年12月11日に、連邦の政策と対立する州の規制の管理に向けた大統領令を出しました。州の規制を特定し、提訴するための作業部会の設置を指示する内容です。
米国で事業を行う会社は、連邦と州の両方の動きを確かめる必要があります。
韓国はAI基本法を制定した
韓国では、2024年12月26日にAI基本法の制定案が国会で議決されました。ジェトロは、2026年1月に施行される予定だと伝えています。
AI産業の育成の支援と、影響の大きいAIや生成AIに対する透明性と安全性の確保の義務などを定める法律です。
日本企業が取るべきAI規制への対応
日本企業が取るべき対応は、以下の5つです。
- 自社で使っているAIを把握する
- ガイドラインに沿って社内ルールを作る
- 既存の法律に触れないかを確かめる
- 海外で事業を行う場合は現地の規制を確かめる
- 規制の動きを定期的に確かめる
自社で使っているAIを把握する
最初に、社内で使われているAIを一覧にします。会社が契約しているツールに加えて、社員が個人で使っているAIも確かめてください。
把握できていないAIには、ルールを適用できません。
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ガイドラインに沿って社内ルールを作る
AI事業者ガイドラインを参考に、社内のルールを作ります。入力してよい情報・AIの出力を人が確かめる工程・責任者を決めておくことが基本です。
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既存の法律に触れないかを確かめる
個人の情報の扱いと、生成したものの権利の扱いを確かめます。顧客の情報をAIに入力する業務や、AIで作ったものを社外に出す業務が対象です。
判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
海外で事業を行う場合は現地の規制を確かめる
EUや米国で事業を行う会社は、現地の規制の対象になるかを確かめます。EUのAI法は、EUの外の会社にも適用される場合があります。
採用や融資の審査など、人の権利に関わる用途でAIを使う場合は、特に注意が必要です。
規制の動きを定期的に確かめる
AIの規制は、短い期間で変わります。EUでは、適用の時期を見直す改正が2026年7月に発効しました。
担当者を決め、半年に1回などの頻度で最新の状況を確かめる仕組みを作りましょう。
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AI規制のよくある質問
AI規制についてよく出る疑問は、以下の4つです。
- 日本ではAIに法規制はありますか?
- AIを規制している国はどこですか?
- AI規制に罰則はありますか?
- 中小企業にも関係がありますか?
日本ではAIに法規制はありますか?
あります。2025年にAI法が施行されました。ただし、活用の推進が中心の法律です。個人情報保護法や著作権法などの既存の法律も、AIの利用に適用されます。
AIを規制している国はどこですか?
EUは、AI法で包括的な規制を定めています。米国は、連邦のレベルの網羅的な規制はなく、州ごとに規制があります。韓国は、AI基本法を制定しました。
AI規制に罰則はありますか?
EUのAI法には、最大3,500万ユーロか世界全体の年間売上高の7%の制裁金があります。日本のAI法には、罰則の規定がありません。
既存の法律に違反した場合は、各法律の罰則の対象になります。
中小企業にも関係がありますか?
中小企業にも関係がある話です。AI事業者ガイドラインは、AIを業務で使う事業者も対象にしています。個人情報保護法や著作権法は、会社の規模に関係なく適用されます。
AI規制への対応は自社のAIの把握から始めましょう
AI規制は、国や地域によって強さが違います。日本は活用の推進が中心で、EUは義務と制裁金を伴う規制を定めています。
まずは、社内で使っているAIを把握しましょう。AI事業者ガイドラインに沿って社内ルールを整え、海外で事業を行う場合は現地の規制も確かめてください。



