営業のAI活用を徹底解説!任せられる業務と導入手順・注意点も紹介

提案書や日報の作成に追われ、顧客と話す時間が足りないと感じていないでしょうか。営業にAIを使えば楽になると聞いても、使える業務や顧客の情報の扱いが分からず、踏み出せない方も多いはずです。
この記事では、営業でのAI活用の現状・任せられる業務・企業の事例・導入の手順・注意点を、HubSpotの調査や各社の公式発表・消費者庁の資料に沿って解説します。
記事を読めば、自社の営業のどの作業からAIを使い始めるかを決められる状態です。結論は、活動記録の入力やリストの作成などの定型の作業から始める進め方が効果を感じやすくなります。空いた時間は、提案の検討と顧客との対話に回しましょう。
営業でAIの活用が広がっている現状
HubSpot Japanは2026年2月に「日本の営業に関する意識・実態調査2026」を公表しました。調査から分かる現状は、以下の3つです。
- 営業職の生成AI活用率は1年で43.4%に伸びた
- 毎日使う人は週に約3.6時間を削減している
- 買い手も購買の検討に生成AIを使い始めている
営業職の生成AI活用率は1年で43.4%に伸びた
法人営業の担当者と責任者の生成AI活用率は、1年で28.9%から43.4%に伸びました。活用した経験のある人の55.6%は、週に1回以上使っています。
使われているツールはChatGPTが75.4%で最も多く、Gemini(38.6%)とCopilot(34.4%)が続きました。調査は2025年10月に、売り手1,545名と買い手515名を対象としてオンラインで行われたものです。
毎日使う人は週に約3.6時間を削減している
生成AIは、使う頻度が高い人ほど効果を実感しています。利用の頻度ごとの結果は、以下の表のとおりです。
| 利用の頻度 | 週あたりの削減時間 | 有料ツールの効果を実感した割合 |
|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 約3.6時間 | 71% |
| 月に1日 | 約1.3時間 | 25% |
有料の生成AIツールへの投資については、83.4%がリターンを感じていると答えました。たまに試すだけでは効果が見えにくく、毎日の業務で使う習慣を作ることが成果の入口です。
買い手も購買の検討に生成AIを使い始めている
変化は買い手の側にも起きています。企業向けの商品やサービスの購買を検討するときに、生成AIを使ったことがある買い手は36.7%でした。
生成AIを使った買い手のうち52.4%は、当初は検討していなかった製品を候補に加えたと答えています。最終的な意思決定に影響したと答えた人も55.3%です。
買い手が商談の前に生成AIで情報を集めている前提で、営業の準備と提案の内容を見直す必要があります。
営業でAIに任せられる業務
営業でAIに任せやすい業務は、以下の5つです。
- 顧客や業界の情報を調べて整理する
- 提案資料やメールの下書きを作る
- 商談を記録して活動履歴を入力する
- アプローチ先のリストを作り優先順位を付ける
- 商談の練習と振り返りに使う
顧客や業界の情報を調べて整理する
商談の前に、相手の会社の事業・最近のニュース・業界の動きを調べる作業は、生成AIで短くできます。Web検索の機能を持つAIなら、会社名を伝えるだけで公開されている情報の要約を作成可能です。
ただし、AIの要約には誤りが混ざることがあります。提案に使う数字や固有名詞は、相手の会社の公式サイトや発表で確かめてください。
AIのハルシネーションとは?原因と対策・防ぐプロンプトを解説
提案資料やメールの下書きを作る
スマートキャンプが営業担当者389人に行った調査では、AIを活用している業務は提案資料の作成が最多でした。営業メールの作成と市場調査が続いています。
文章の作成と情報の収集は、生成AIが得意とする領域です。商談のメモと自社の資料を渡すと、提案の構成案やお礼のメールの下書きを短時間で作れます。
資料作成AIのおすすめ5選と選び方を徹底解説!無料で使える範囲と注意点も紹介
商談を記録して活動履歴を入力する
商談の録音から議事録を作り、営業の活動を管理するシステムに記録する作業も、AIに任せやすい業務です。営業の活動や顧客の情報を管理するシステムは、SFAやCRMと呼ばれます。
HubSpotの調査では、活動記録の入力に生成AIを使っている人の削減時間が週に4.0時間で、業務の中で最も長い結果でした。入力の漏れが減ると、チームで共有できる情報も増えます。
議事録作成AIの選び方!Zoom・Teams・Meetの標準機能と無料で試す方法
アプローチ先のリストを作り優先順位を付ける
アプローチ先のリストアップと優先順位付けに生成AIを使っている人も、週に3.9時間を削減しています。HubSpotは、繰り返しの多い定型の作業が、生成AIの効果を感じやすい入口になり得ると分析しました。
自社の過去の受注のデータがあれば、受注につながりやすい相手の特徴をAIで見つける使い方もできます。
商談の練習と振り返りに使う
生成AIに顧客の役を演じさせると、商談の練習の相手になります。想定される質問や断りの言葉を出させて、答え方を準備する使い方も有効です。
明治安田生命は、営業職員がスマートフォンで1人で練習できる「AIロープレ」を導入しました。話す内容・速さ・表情をAIが解析して点数で評価する仕組みです。2021年3月のGoogle Cloudの公式ブログでは、約7,000名が利用していると紹介されています。
営業でのAI活用の事例
営業でのAI活用の事例を、公式に発表された情報から以下の3つ紹介します。
- 大塚商会はAIが商談先を提案して商談を増やした
- テプコカスタマーサービスは提案書とリスト作成を生成AIで検証した
- NECは提案書を自動で作る仕組みを自社の営業で使い始めた
大塚商会はAIが商談先を提案して商談を増やした
NECが公開している導入事例によると、大塚商会は5,000万件の商談と12億件以上の売り上げ明細のデータをAIで分析しています。分析の結果は、営業担当者のスケジュールに合わせて商談先を提案する「AI行き先案内」に使われる仕組みです。
AIは半年で7万件以上の商談を提案し、AIの提案による商談は1年で3倍に増えたと紹介されています。蓄積したデータが多いほど、AIの提案は具体的になります。
テプコカスタマーサービスは提案書とリスト作成を生成AIで検証した
NTTデータは、東京電力グループのテプコカスタマーサービスと、営業での生成AI活用を検証しました。期間は2025年1月から4月までで、対象は太陽光発電設備の設置と販売の営業です。
提案書では、慣れた営業社員でも1件あたり2時間半ほどかかっていた提案の筋立ての検討を、生成AIで支援しました。テンプレートの全10ページを、高い精度で自動生成できたと報告されています。
見込み客の調査では、建物を1件ずつ地図で確かめる作業に毎月120時間ほどかかっていました。航空写真を解析するツールを使うことで、調査の時間を削減できる可能性が確認されています。
NECは提案書を自動で作る仕組みを自社の営業で使い始めた
NECは2025年11月に、AIを活用した営業支援ソリューションを発表しました。議事録などの活動記録と標準の提案書をもとに、顧客向けの提案書と確認事項を整理したシートを自動で作ります。
発表では、2025年11月からNECが自社で利用し、2026年3月下旬から顧客への提供を始める計画が示されました。社内に蓄積した過去の提案事例を活用するため、個人の経験に頼らない提案書作りを狙っています。
AI活用事例を業務別に紹介!企業の成果と自社で始める手順を解説
営業向けのAIエージェントでできること
営業向けのAIエージェントについては、以下の3つを押さえます。
- AIエージェントは作業を自律的に進めるAI
- 提案書の準備や記録の入力を代行する
- AIによる架電は接点のある顧客から始める
AIエージェントは作業を自律的に進めるAI
AIエージェントは、人が1つずつ指示しなくても、目的に向けて複数の作業を自分で進めるAIです。質問に答えるチャット型のAIと違い、調べる・作る・記録するなどの作業を続けて行います。
営業では、商談の準備から記録までの一連の作業を、まとめて任せる使い方が想定されています。
提案書の準備や記録の入力を代行する
NTTデータは、営業向けのAIエージェント「LITRON Sales」を提供しています。データの入力・提案書の準備・契約書や社内文書の作成などを、自律的に支援・代行すると説明されています。
NECのソリューションも、既存の営業支援システムと連携して動く設計です。NTTデータの検証でも、営業社員が普段使うPowerPointの上で操作できるツールが選ばれました。
普段使っているシステムやソフトの中で動くことが、現場に定着させる条件になります。
AIによる架電は接点のある顧客から始める
NTTデータの検証では、電話をかけるAIエージェントも試されました。会話した検証担当者から最も多かった感想は「想像していたよりも自然」です。
一方で、AIからの電話に対する顧客の信頼の確保が課題に挙がりました。資料請求への対応や契約の更新の連絡など、すでに接点のある顧客が相手であれば、実用化の可能性が高いと報告されています。
営業でAIを活用するメリット
営業でAIを活用するメリットは、以下の3つです。
- 事務作業の時間を減らせる
- 提案を考える時間が増える
- 経験の差による提案の質のばらつきを減らせる
事務作業の時間を減らせる
提案書・メール・議事録・活動記録の入力など、営業の事務作業はAIで短くできます。スマートキャンプの調査では、AIの導入後に営業の成果が向上したと感じている人が66.9%でした。
質が向上したと感じている人も59.9%います。AIは効率が上がる代わりに質が落ちる道具ではないと、現場が実感している結果です。
提案を考える時間が増える
HubSpotの調査では、生成AIで生まれた時間の使い道は、提案の質を高めるための思考時間が43.9%で最多でした。顧客との対話や関係づくりに使う人も32.3%います。
同じ調査で、買い手の81.2%は営業担当者だからこそ提供できる価値に期待していると答えました。個別の事情をくんだ提案や、潜在的なニーズの引き出しが求められています。
経験の差による提案の質のばらつきを減らせる
AIは、経験の浅い担当者の支えにもなります。NTTデータの検証は、新任者が営業活動を行うときの質をそろえることも目的にしていました。
明治安田生命も、蓄積した練習のデータを解析し、成績のよい営業職員の話し方や表情を共有できる知識に変えたいとしています。
営業にAIを導入する手順
営業へのAIの導入は、以下の5つの手順で進めます。
- 時間がかかっている作業を洗い出す
- 入力してよい情報のルールを決める
- 定型の作業から試す
- 営業の業務の流れに組み込む
- 効果を測って対象を広げる
時間がかかっている作業を洗い出す
最初に、営業担当者が1週間でどの作業に何時間使っているかを書き出します。提案書の作成・活動記録の入力・リストの作成・メールの作成など、作業の単位で分けると対象を選びやすくなります。
顧客と話す時間以外で、最も時間を使っている作業が最初の候補です。
入力してよい情報のルールを決める
使い始める前に、AIに入力してよい情報の範囲を決めます。顧客の氏名や連絡先・未公開の取引条件などを、どのサービスになら入力してよいかを文書にしてください。
会社が契約した法人向けのプランを用意すると、個人の判断で無料のサービスに顧客の情報を入力する事態を防げます。
生成AIの社内ルールの作り方を徹底解説!盛り込む項目とひな形も紹介
定型の作業から試す
最初に試す作業は、活動記録の入力やリストの作成など、繰り返しの多い定型の作業が向いています。HubSpotの調査でも、削減時間が長かったのは定型の2つの作業でした。
少人数のチームで2〜4週間ほど試し、作業時間がどれだけ減ったかを記録します。
営業の業務の流れに組み込む
AIは、使ってよいと伝えるだけでは定着しません。HubSpotの調査では、会社の後押しの段階によって、週に1回以上使う人の割合が以下のように変わりました。
| 会社の後押しの段階 | 週に1回以上使う人の割合 |
|---|---|
| 支援なし | 35.6% |
| 使ってよいと伝えるだけ | 47.2% |
| 研修や勉強会を行う | 56.9% |
| 業務の流れに組み込む | 74.8% |
業務の流れへの組み込みとは、顧客管理のシステムとの連携や、チームで共有するプロンプトの用意などを指します。商談後は必ずAIで議事録を作るなど、手順の中にAIを入れてください。
AI研修とは?法人向けの内容・選び方と費用の実例や助成金の条件を解説
効果を測って対象を広げる
試した結果は、削減できた時間・商談の件数・提案までの日数などの数字で確かめます。効果が出た使い方は手順書にまとめ、ほかのチームに広げます。
効果が出なかった作業は、渡す情報や指示の出し方を見直してから、続けるかどうかを判断しましょう。
営業でAIを使うときの注意点
営業でAIを使うときの注意点は、以下の5つです。
- 顧客の情報を入力する前に扱いを確かめる
- AIが作った内容の事実を確かめる
- 営業メールは特定電子メール法を守って送る
- 消費者への電話の勧誘は特定商取引法の規制を受ける
- 顧客との対話をAIに任せきりにしない
顧客の情報を入力する前に扱いを確かめる
営業が扱う情報には、顧客の氏名・連絡先・商談の内容などの個人情報や機密が含まれます。個人情報保護委員会は、生成AIに入力した個人情報が学習に利用され、出力されるリスクについて注意を呼びかけました。
入力したデータが学習に使われない設定やプランかどうかを、使う前に確かめてください。
AIに個人情報を入れてよい?どこまで大丈夫かを個人情報保護法から解説
AIが作った内容の事実を確かめる
AIは、事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあります。提案書の中の数字・相手の会社の情報・自社の商品の仕様は、送る前に必ず人が確かめます。
NTTデータの検証でも、電力の使用量や効果の数値は、正確さが求められるため計算式で算出していました。数字は決まった計算で出し、文章の部分をAIに任せる分担が安全です。
営業メールは特定電子メール法を守って送る
AIを使うと、営業メールを短時間で大量に作れます。ただし、広告や宣伝のメールは、あらかじめ同意した相手にだけ送れる決まりです。
総務省と消費者庁の資料によると、取引関係にある相手や名刺などでメールアドレスを通知した相手には、同意がなくても送れる例外があります。メールアドレスをインターネットで公表している事業者も例外に含まれますが、広告宣伝メールを送らないよう求める記載がある場合は送れません。
送るメールには、送信者の名称や、受信を拒否する連絡先の表示が必要です。受信を拒否された相手には、以後は送信できません。詳しい条件は、総務省のガイドラインで確かめてください。
消費者への電話の勧誘は特定商取引法の規制を受ける
個人の消費者に電話をかけて商品やサービスを勧誘する取引は、特定商取引法の電話勧誘販売に当たります。消費者庁の解説によると、勧誘の前に事業者の名称や勧誘が目的であることを告げなければなりません。
契約しない意思を示した相手への再度の勧誘も禁止されています。相手が営業のために結ぶ契約は適用の対象外です。AIで電話の件数を増やすときは、相手と目的に合った法律を事前に確かめましょう。
顧客との対話をAIに任せきりにしない
買い手が営業に求めているのは、自社の事情をくんだ提案と、潜在的なニーズの引き出しです。AIが作った文章をそのまま送るだけでは、買い手の期待に応えられません。
AIには下書きと準備を任せ、相手の事情に合わせた調整と対話は人が行います。
営業のAI活用のよくある質問
営業のAI活用についてよく出る疑問は、以下の4つです。
- 営業の仕事はAIでなくなりますか?
- AI営業とは何ですか?
- 無料の生成AIでも営業に使えますか?
- AIの営業電話とは何ですか?
営業の仕事はAIでなくなりますか?
資料の作成や記録の入力などの作業は、AIに置き換わっていきます。一方で、HubSpotの調査では、買い手の81.2%が営業担当者だからこそ提供できる価値に期待していました。
個別の事情をくんだ提案や、信頼関係づくりは人の仕事として残ります。
AI営業とは何ですか?
営業の活動にAIを活用することを指す言葉です。情報の収集・提案書やメールの作成・商談の記録・リストの作成などに、AIを使います。
AIエージェントが電話やメールでの連絡を代行する仕組みを指して使われる場合もあります。
無料の生成AIでも営業に使えますか?
顧客の情報を含まない作業であれば、無料のプランでも試せます。業界の動きの整理や、メールの文面のひな形づくりなどが向いています。
顧客の氏名や商談の内容を入力する場合は、データの扱いが明確な法人向けのプランを選んでください。
AIの営業電話とは何ですか?
AIの音声が、人の代わりに電話をかけて案内や勧誘を行う営業の方法です。AIエージェントの登場で、自然な会話ができるようになってきました。
個人の消費者への電話の勧誘には、特定商取引法の規制があります。受けた側は、不要な場合に契約しない意思をはっきり伝えれば、事業者は再度の勧誘ができなくなります。
営業のAI活用は定型の作業から始めましょう
営業でのAI活用は広がっており、毎日使う人ほど時間の削減を実感しています。効果を感じやすいのは、活動記録の入力やリストの作成などの定型の作業です。
まずは時間がかかっている作業を1つ選び、入力してよい情報のルールを決めてから試しましょう。空いた時間を提案の検討と顧客との対話に回すことが、AIを活用した営業の成果につながります。



