AI活用

AI活用事例を業務別に紹介!企業の成果と自社で始める手順を解説

中島大介(なかじ)読了時間 約17分
AI活用事例のアイキャッチ

AIを業務に取り入れたいと考えても、他社がどんな仕事にどう使ってどれだけ成果を出しているのかが分からず、社内の説得材料に困っていないでしょうか。事例を探しても、出どころが分からない数字や自社とかけ離れた先端的な取り組みばかりで、参考にしにくいはずです。

この記事では、日本企業の生成AI活用の現状を総務省の情報通信白書で確かめたうえで、パナソニック コネクト・LINEヤフー・横須賀市・三井住友フィナンシャルグループ・楽天の事例を各社の公式発表に沿って紹介します。事例から分かる成功のポイントと、つまずきやすい点・自社で始める手順も解説します。

記事を読めば、自社のどの業務からAIを使い始めればよいかを判断できる状態です。結論は、安全に使える環境とルールを先に整えて議事録や資料作成などの共通業務から始め、削減した時間を数字で測る進め方が成果につながります。

日本企業の生成AI活用の現状

総務省の令和7年版情報通信白書は、日本・米国・ドイツ・中国の企業へのアンケートをもとに、生成AIの活用状況を以下のように整理しています。

項目日本の割合補足
生成AIの活用方針を定めている企業49.7%(2024年度)2023年度の42.7%から増加・他国より低い
何らかの業務で生成AIを使っている55.2%他国より低い
メールや議事録・資料作成などの補助に使っている47.3%他国より低い

白書から読み取れるポイントは以下の3つです。

  • 活用方針を定めた企業は約半数にとどまる
  • 中小企業では方針を明確に定めていない企業が多い
  • 最大の懸念は効果的な活用方法が分からないこと

活用方針を定めた企業は約半数にとどまる

白書によると、生成AIを積極的に活用する方針か領域を限定して利用する方針を定めている日本企業は、2024年度の調査で49.7%でした。2023年度の42.7%から増えたものの、調査した他の国と比べると引き続き低い傾向にあります。

方針が決まっていない会社では、社員が個人の判断でAIを使ったり、逆に使えなかったりする状態が生まれやすくなります。

中小企業では方針を明確に定めていない企業が多い

企業の規模別に見ると、日本の中小企業では「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占めています。白書は、中小企業では大企業と比べて生成AIの活用方針の決定が遅れていると指摘しています。

規模の小さい会社ほど、最初の一歩として方針とルールを決めるだけでも他社との差を縮める効果は大きいはずです。

最大の懸念は効果的な活用方法が分からないこと

生成AIを導入する際の懸念として、日本で最も多かったのは「効果的な活用方法がわからない」でした。次いで、社内情報の漏えいなどのセキュリティリスクや、運用と導入の費用が挙げられています。

活用方法が分からない悩みには、他社の具体的な事例が最も役立ちます。

業務別のAI活用事例

公式発表で内容を確かめられた事例を業務別に並べると、以下の表のとおりです。

組織分野主な使い方公表された成果・方針
パナソニック コネクト全社の業務効率化自社向けAIアシスタント2025年度に78.8万時間を削減
LINEヤフー全社の働き方生成AIの活用を義務化3年で業務生産性2倍を目指す
横須賀市自治体の業務全庁でChatGPTを実証約8割が効率が上がると回答
三井住友フィナンシャルグループ金融専用環境のAIアシスタント社内専用で安全に運用
楽天ソフトウェア開発Claude Codeで開発を自動化市場投入までを24日から5日に

各事例の内容は以下の5つです。

  • パナソニック コネクトは全社員のAIアシスタントで労働時間の3.4%を削減
  • LINEヤフーは調査・資料作成・会議で生成AIの活用を義務化
  • 横須賀市は全庁での実証で職員の約8割が効率化を実感
  • 三井住友フィナンシャルグループは専用環境のAIアシスタントを全社で活用
  • 楽天はClaude Codeで新機能の市場投入までの期間を79%短縮

パナソニック コネクトは全社員のAIアシスタントで労働時間の3.4%を削減

パナソニック コネクトは、大規模言語モデルを使って自社向けのAIアシスタント「ConnectAI」を開発し、国内の全社員約11,800人に活用を広げてきました。同社の2026年7月29日の発表によると、2025年度のAI活用による労働時間の削減効果は78.8万時間で、年間の総労働時間の3.4%に当たります。

利用回数は361万回で前年度の1.6倍、1回あたりの削減時間は33分、月に1回以上使う社員の割合は61%でした。議事録作成・コード生成・ログ分析・提案書作成の支援・設計書や仕様書の作成など、個人業務での利用が広がったことが要因と分析されています。

同社は、生成AIの業務利用を始めた2023年2月の時点で、業務生産性の向上・社員のAIスキル向上・シャドーAIの利用リスクの軽減を目標に掲げていました。2030年には総労働時間の10%をAIで削減することを目指しています。

LINEヤフーは調査・資料作成・会議で生成AIの活用を義務化

LINEヤフーは2025年7月14日、全従業員約11,000人を対象に、業務で生成AIを使うことを前提にした働き方を始めると発表しました。今後3年間で業務生産性を2倍に高めることを目指しています。

従業員の業務の3割を占める調査・検索・資料作成・会議から着手し、具体的なルールを定めました。たとえば調査では「まずはAIに聞く」、資料作成では「ゼロベースの資料作成は行わない」、社内会議の議事録作成はすべてAIで行うとしています。

2025年6月から全従業員にChatGPT Enterpriseのアカウントを付与し、リスク管理とプロンプトの技術に関するeラーニングの試験合格を利用の条件にしています。

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横須賀市は全庁での実証で職員の約8割が効率化を実感

横須賀市は2023年4月20日から、ChatGPTを全庁で使う実証を行い、同年6月5日に結果を発表しました。約半数の職員が実際に使い、最終アンケートの回答者のうち約8割が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と答えています。

一方で、検索の用途での利用が約3割見られたことや6%程度の職員が概ね不適切な回答が返ってくると答えたことも、課題として公表されています。市は本格導入とあわせて、職員のスキルアップの研修や庁内のプロンプトコンテストを企画しました。

失敗しやすい点も含めて公表しており、導入を検討中の組織の参考になる事例です。

三井住友フィナンシャルグループは専用環境のAIアシスタントを全社で活用

三井住友フィナンシャルグループは2023年4月、日本総合研究所・NECとともに、Microsoft Azureのグループ専用環境上で動くAIアシスタント「SMBC-GPT」の実証実験を始めると発表しました。情報が社外に流出しない環境で、社内の従業員だけが使える形にしています。

文章の作成・要約・翻訳・ソースコードの生成などを、チャットの形で手軽に行える設計です。同グループの記事によると、2023年7月には従業員専用のAIアシスタント「SMBC-GAI」として業務での活用を始め、開発を短期間で進める一方でルールづくりに時間をかけたと紹介されています。

楽天はClaude Codeで新機能の市場投入までの期間を79%短縮

楽天は、AnthropicのClaude Codeを使ってソフトウェア開発を変えています。Anthropicの公開している導入事例によると、新機能の市場投入までの期間を24日から5日へ、79%短縮しました。

機械学習のエンジニアが、1,250万行のコードからなるオープンソースのライブラリに新しい処理を実装する作業を任せたところ、Claude Codeは7時間の自律作業で完了させています。楽天は、既存の開発の流れにAIを後から付け足すのではなく、Claude Codeを中心に開発の流れを設計し直したと紹介されています。

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事例から分かるAI活用の成功ポイント

紹介した事例に共通する成功のポイントは以下の5つです。

  • 安全に使える専用の環境を先に用意する
  • 使い方のルールを業務の場面ごとに決める
  • 研修や試験で使い方を全員に教える
  • 削減した時間を数字で測って公表する
  • 社内のデータとつないで使い道を広げる

安全に使える専用の環境を先に用意する

三井住友フィナンシャルグループは、情報が社外に流出しない専用環境のAIアシスタントを用意しました。パナソニック コネクトも、自社向けのAIアシスタントを提供し、シャドーAIの利用リスクの軽減を目標に掲げています。

シャドーAIは、会社が認めていないAIのサービスを社員が個人の判断で業務に使うことです。安全な公認の道具を先に用意すると、社員は安心して使え、会社は情報漏洩のリスクを抑えられます。

シャドーAIとは?リスクと対策を徹底解説!公認ルートの作り方も紹介

使い方のルールを業務の場面ごとに決める

LINEヤフーは、調査・資料作成・会議の場面ごとに、AIをどう使うかを具体的なルールにしました。「AIを使ってよい」と許可するだけでなく「まずはAIに聞く」のように行動を決めた点が特徴です。

三井住友フィナンシャルグループの記事でも、ルールづくりに時間をかけたことが紹介されています。

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研修や試験で使い方を全員に教える

LINEヤフーは、リスク管理とプロンプトの技術に関するeラーニングの試験合格を、生成AIの利用条件にしています。横須賀市も、職員のスキルアップの研修や庁内のプロンプトコンテストを企画しました。

道具を配るだけでは使われず、使い方を学ぶ機会を組み合わせることで活用が広がります。

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削減した時間を数字で測って公表する

パナソニック コネクトは、削減時間・利用回数・1回あたりの削減時間・利用者の割合を毎年測り、公表しています。数字で成果を示すことで、次の投資や全社への展開の判断がしやすくなります。

横須賀市も、利用者の割合やアンケートの結果を数字で公表しました。

社内のデータとつないで使い道を広げる

パナソニック コネクトは、2024年から文書や図面・仕様書などとAIをつなぐ仕組みを広げ、2026年度からは経理や営業の業務システムのデータとの連携も進めるとしています。図面や設計仕様を照らし合わせるAIエージェントの利用も、すでに始まっています。

汎用のAIを使うだけでなく自社のデータとつなぐことが、他社にはまねできない使い方への近道です。

事例から分かるつまずきやすい点

公表された事例や調査から読み取れる、つまずきやすい点は以下の3つです。

  • 検索の代わりに使うと期待外れになりやすい
  • AIの回答が常に正しいとは限らない
  • 活用方法が分からないまま導入が止まる

検索の代わりに使うと期待外れになりやすい

横須賀市の実証では、ChatGPTの利用用途に向かない検索の用途での利用が約3割見られたことが課題に挙がりました。最新の事実や正確な数字を調べる使い方では、期待した答えが返らないことがあります。

文章の下書き・要約・アイデア出しなど、AIが得意な使い方から始めると、効果を実感しやすくなります。

AIの回答が常に正しいとは限らない

横須賀市の最終アンケートでは、6%程度の職員が概ね不適切な回答が返ってくると答えました。AIの回答を下書きとして扱い、人が確かめてから使う流れを前提にする必要があります。

特に、社外に出す文書や数字を含む資料は、必ず人の確認を通しましょう。

活用方法が分からないまま導入が止まる

情報通信白書では、日本企業の生成AI導入の懸念として「効果的な活用方法がわからない」が最も多く挙がりました。道具を導入しても、何に使えばよいかが共有されなければ、利用は広がりません。

LINEヤフーのように業務の場面ごとに使い方を決めたり、横須賀市のように社内で活用例を集めて広めたりする工夫が必要です。

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自社でAI活用を始める手順

事例をもとに、自社でAI活用を始めるときの流れをまとめると以下の5ステップです。

  • 活用の方針と社内ルールを決める
  • 安全に使える道具を用意する
  • 議事録や資料作成などの共通業務から始める
  • 削減した時間を数字で測る
  • 使い方を共有して自社のデータとつなぐ

活用の方針と社内ルールを決める

最初に、会社としてAIを使う方針と、入力してよい情報の範囲などのルールを決めます。白書が示すとおり、方針を定めている企業はまだ約半数のため、方針を決めること自体が出発点になります。

ルールは完璧を目指さず、最低限の禁止事項から始めて運用しながら見直す前提にすると進めやすいはずです。

安全に使える道具を用意する

社員が個人のアカウントで使う状態を避けるため、法人向けのプランや社内専用の環境を用意します。入力した内容が学習に使われない契約かどうかも、選ぶときの基準です。

道具を用意したら、利用の条件として短い研修を受けてもらうと、ルールが浸透しやすくなります。

議事録や資料作成などの共通業務から始める

最初は、どの部署にもある議事録・資料作成・調査などの共通業務から始めます。LINEヤフーが着手した領域も、従業員の業務の3割を占める共通領域でした。

効果を実感しやすい業務で成功体験を作ると、他の業務への展開がスムーズになります。

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削減した時間を数字で測る

使い始めたら、利用回数・1回あたりの削減時間・利用者の割合などを測ります。パナソニック コネクトのように数字で示せば、経営層への説明や追加の投資判断がしやすくなります。

アンケートで、効率が上がったと感じるかや、困った点を集めるのも有効です。

使い方を共有して自社のデータとつなぐ

うまくいった使い方を社内で共有し、活用例を増やしていきます。慣れてきたら、社内の文書や業務データとAIをつないで、自社ならではの使い方に広げます。

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AI活用事例のよくある質問

AI活用事例についてよく出る疑問への回答は以下の4つです。

  • AIの身近な活用例はありますか?
  • 中小企業でもAIを活用できますか?
  • AI活用で成果が出るまでどれくらいかかりますか?
  • AIを使った事例を探すときの注意点はありますか?

AIの身近な活用例はありますか?

業務で身近なのは、メールの下書き・会議の議事録・資料の作成です。情報通信白書でも、メールや議事録・資料作成などの補助に生成AIを使っている日本企業の割合は47.3%でした。

LINEヤフーが社内会議の議事録作成をすべてAIで行うとしているように、毎日の定型業務ほど効果を実感しやすくなります。

中小企業でもAIを活用できますか?

活用できます。法人向けのAIサービスは少人数から契約できるものが多く、大きな初期投資をしなくても始められます。

白書によると、中小企業では活用方針を明確に定めていない企業が約半数のため、方針とルールを決めることから始めるだけでも前進です。

AI活用で成果が出るまでどれくらいかかりますか?

業務や組織によって異なります。パナソニック コネクトは2023年2月に業務利用を始め、2025年度に総労働時間の3.4%を削減するまで、利用回数と1回あたりの削減時間を年々伸ばしてきました。

すぐに大きな成果を求めるより、共通業務で小さく始めて数字を測り、少しずつ広げる進め方が現実的です。

AIを使った事例を探すときの注意点はありますか?

数字の出どころを確かめることが大切です。企業の公式発表・自治体の報道発表・調査機関の資料など、一次情報で確かめられる事例を参考にしましょう。

成果の数字が試算なのか実績なのかも、確かめておくべき点です。自社に近い規模や業種の事例を選ぶと、計画に落とし込みやすくなります。

AI活用事例を参考に共通業務から小さく始めましょう

日本企業の生成AI活用は広がりつつありますが、方針を定めた企業はまだ約半数です。紹介した5つの事例からは、安全な環境とルールを先に整えて使い方を教え、成果を数字で測る共通点が見えてきます。

まずは活用の方針と社内ルールを決め、議事録や資料作成などの共通業務から始めましょう。削減した時間を測りながら、使い方を共有して自社のデータとつないでいけば、AIの活用を会社の力に変えていけます。

この記事の監修者

中島大介(なかじ)

中島大介(なかじ)

株式会社メリル 代表取締役 / 記事監修

株式会社メリル代表取締役。SEO歴20年以上。最新AIやセキュリティについて発信するYouTube「ウェブ職TV」は登録者15万人以上。著書「ChatGPT & Copilotの教科書」は10万部突破!

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