AIマーケティングとは?活用できる業務と事例・注意点を解説

広告文や記事の作成にAIを使えば楽になると聞くものの、どの業務にどこまで任せてよいのか分からず、手を出せずにいないでしょうか。AIで作った広告や記事が、著作権や広告のルールに触れないかも気になるはずです。
この記事では、AIマーケティングの意味・活用できる業務・国内企業の事例・メリット・注意点・始め方を、各社の公式発表やGoogle・消費者庁の公式情報に沿って解説します。
記事を読めば、自社のマーケティングのどこからAIを使い始めるかを決められる状態です。結論は、広告文や記事の下書きなど人が確かめやすい作業から始め、公開する前に事実・権利・広告表示の3点を必ず人が確認する進め方が安全です。
AIマーケティングとはAIをマーケティングの業務に活用すること
まず、AIマーケティングの全体像を以下の3つで押さえます。
- 分析や予測を行うAIと文章や画像を作る生成AIがある
- 広告の配信サービスにもAIが組み込まれている
- 人が決めた目的と確認があって初めて成果につながる
分析や予測を行うAIと文章や画像を作る生成AIがある
マーケティングで使われるAIは、大きく2種類に分けられます。1つは、過去のデータから広告の効果や顧客の行動を予測するAIです。
もう1つは、広告文・記事・画像・動画などを作る生成AIです。ChatGPTやClaudeなどの登場で、専門の知識がなくても文章や画像を作れるようになり、マーケティングの現場での利用が広がりました。
広告の配信サービスにもAIが組み込まれている
AIは、広告を配信するサービスの中にも組み込まれています。Google広告のP-MAXは、1つのキャンペーンでYouTube・ディスプレイ・検索・Discover・Gmail・マップなどに広告を配信できる仕組みです。
公式ヘルプによると、P-MAXでは、広告・オーディエンス・クリエイティブの組み合わせに関するGoogle AIの予測を使って配信が最適化されます。生成AIのツールで、画像や動画の素材を作る機能も用意されています。
人が決めた目的と確認があって初めて成果につながる
AIは、与えられた目的に向けて案を出したり、配信を調整したりする道具です。誰に何を伝えるかの方針や、出来上がったものが自社のブランドにふさわしいかの判断は、人が担います。
伊藤園がAIで生成したデザインを参考にしたパッケージでも、生成された画像をもとにデザイナーが作り直して完成させたと公表されています。
AIをマーケティングに活用できる業務
マーケティングでAIを活用しやすい業務は以下の5つです。
- 広告文やキャッチコピーの案を作る
- 広告の画像や動画の素材を作る
- 広告の効果を予測して配信を最適化する
- 記事やメールなどのコンテンツの下書きを作る
- 調査の整理やデータの分析を補助する
広告文やキャッチコピーの案を作る
生成AIは、商品の特徴とターゲットを伝えると、広告文やキャッチコピーの案を短時間で数多く出せます。人が1案ずつ考えるより、多くの切り口を試せる点が利点です。
東京都の文章生成AI活用事例集にも、キャッチコピー案の作成やSNSの文章を魅力的にする使い方が載っています。出てきた案をそのまま使うのではなく、選んで磨く前提で使います。
広告の画像や動画の素材を作る
画像や動画の生成AIを使えば、撮影を行わずに広告の素材を作れます。Google広告のP-MAXにも、生成AIのツールで画像や動画を生成する機能があります。
公式ヘルプによると、Google広告で生成AIを使って作成した画像には、AIで生成されたことを示す見えない透かしとメタデータが付く仕組みです。
広告の効果を予測して配信を最適化する
広告の配信では、AIが入札や配信先を調整する仕組みが一般的になっています。P-MAXは目標にもとづいて配信するキャンペーンで、Google AIの予測を使ってコンバージョンにつながる配信に最適化します。
コンバージョンは、購入や問い合わせなど、広告で達成したい成果のことです。公式ヘルプは、AIの性能は入力されるデータによって決まるため、コンバージョンの測定の精度を高めることが近道だと説明しています。
記事やメールなどのコンテンツの下書きを作る
ブログ記事・メールマガジン・SNSの投稿など、コンテンツの下書きも生成AIが得意とする作業です。構成案を作らせたり、書いた文章を校正させたりする使い方もできます。
ただし、AIは事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあります。数字や固有名詞は、必ず元の資料で確かめてください。
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調査の整理やデータの分析を補助する
アンケートの自由回答の分類や、顧客の声の要約など、大量の文章を整理する作業にもAIを使えます。分析の結果から次の施策の案を出させることも可能です。
顧客の個人情報を含むデータを入力する場合は、利用するサービスのデータの扱いを先に確かめる必要があります。
AIマーケティングの事例
公式発表で内容を確かめられる国内企業の事例は、以下の表のとおりです。
| 企業 | 取り組み | 発表された内容 |
|---|---|---|
| パルコ | 生成AIで広告を制作 | モデルの撮影を行わずに人物から背景まで生成 |
| 伊藤園 | テレビCMにAIタレントを起用 | 現在と約30年後の姿を同じ人物として表現 |
| サイバーエージェント | 広告の効果をAIで予測 | 既存の1位を上回ると予測された広告だけを納品 |
各事例の内容は以下の3つです。
- パルコは撮影を行わずに生成AIだけで広告を制作
- 伊藤園はテレビCMにAIタレントを起用
- サイバーエージェントは効果予測AIで広告を選別
パルコは撮影を行わずに生成AIだけで広告を制作
パルコは2023年10月30日、画像生成AIを使ったファッション広告「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」を公開したと発表しました。実際のモデルの撮影は行わず、人物から背景までをプロンプトから作っています。
グラフィックとムービーに加えて、ナレーションと音楽も生成AIで制作されました。撮影を前提にしていた広告制作の進め方を、大きく変えた事例です。
伊藤園はテレビCMにAIタレントを起用
伊藤園は、特定保健用食品「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMに、AIで生成したAIタレントを起用しました。同社の発表によると、2023年9月に放映を始めたCMで、AIタレントを日本で初めて採用しています。
現在の人物と約30年後の未来の自分が別人に見えないように表現する手法として、AIによる生成が選ばれました。2024年4月には、AIタレントを起用したCMの第二弾を放映しています。
サイバーエージェントは効果予測AIで広告を選別
サイバーエージェントは2020年5月、広告の配信効果を事前に予測するAIを開発して「極予測AI」の提供を始めたと発表しました。配信中で最も効果が出ている広告と新しい広告を競わせ、AIの予測値が上回った広告だけを納品する仕組みです。
同社の先行テストでは、既存の1位の広告に対する勝率が、通常の制作の進め方の2.6倍になったと発表されています。広告を作る段階だけでなく、選ぶ段階でAIを使う事例です。
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AIをマーケティングに使うメリット
AIをマーケティングに使うメリットは以下の3つです。
- 制作にかかる時間と手間を減らせる
- 多くの案を作って試せる
- 少人数でも施策を回せる
制作にかかる時間と手間を減らせる
広告文や記事の下書き、画像の素材づくりをAIに任せると、ゼロから作る時間を減らせます。パルコの事例のように、撮影を行わずに広告を制作できる場面も出てきました。
空いた時間は、企画の検討や顧客の理解など、人にしかできない仕事に回せます。
多くの案を作って試せる
運用型の広告では、多くのパターンを用意して効果を比べることが成果につながります。サイバーエージェントの発表も、短期間で多種多様かつ大量の広告を作る必要性を背景に挙げています。
AIを使えば、切り口の違う案を短時間で用意できるため、効果の検証を速く回すことが可能です。
少人数でも施策を回せる
文章・画像・分析の作業をAIが補助することで、少人数のチームでも幅広い施策に取り組めます。専任の担当者を置きにくい中小企業ほど、効果を感じやすいはずです。
ただし、最終的な確認の工程は省けません。確認の手順まで含めて、無理のない体制を組みましょう。
AIをマーケティングに使うときの注意点
AIをマーケティングに使うときに押さえたい注意点は以下の5つです。
- AIが書いた内容の事実を必ず確かめる
- 画像や文章が他人の著作権を侵害しないか確かめる
- 広告であることを隠す表示は景品表示法の違反になる
- 価値のない記事を大量に公開すると検索のスパムになる
- 顧客の情報を入力するときはデータの扱いを確かめる
AIが書いた内容の事実を必ず確かめる
AIは、存在しない事例や誤った数字を書くことがあります。広告や記事に誤りがあると、会社の信用を損ないます。
消費者庁の説明のとおり、うそや大げさな表示は景品表示法の規制対象です。公開する前に、事実と根拠を人が確かめてください。
画像や文章が他人の著作権を侵害しないか確かめる
AIで作った画像や文章でも、既存の作品と似ていて、もとにしたと認められれば著作権の侵害になります。文化庁は、AI生成物を利用する前に、既存の作品と似ていないかをインターネット検索などで確かめるよう求めています。
指示に他社の作品名やキャラクター名を入れると、侵害と判断されやすくなる点にも注意が必要です。
広告であることを隠す表示は景品表示法の違反になる
消費者庁によると、2023年10月1日から、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法の違反になりました。規制の対象は、商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。
対象には、SNSの投稿やレビューの投稿も含まれます。AIで口コミやレビューの文章を作り、第三者の感想のように見せて掲載することは避けてください。
価値のない記事を大量に公開すると検索のスパムになる
Googleは、生成AIを使ったコンテンツについての公式ガイダンスを公開しています。生成AIは調査などに便利な一方で、利用者にとっての価値を付け加えずに大量のページを生成すると、スパムに関するポリシーに違反する可能性があると説明しています。
ガイダンスが求めているのは、正確性・品質・関連性を優先することです。AIで下書きを作る場合も、自社の経験や一次情報を加えて、読者の役に立つ内容に仕上げる必要があります。
顧客の情報を入力するときはデータの扱いを確かめる
顧客の名簿や問い合わせの内容をAIに入力する場合は、入力したデータが学習に使われないか、どこに保存されるかを確かめます。個人情報を扱う場合は、本人に伝えている利用目的の範囲に収まっているかも確認が必要です。
業務で使うなら、法人向けのプランを選び、入力してよい情報の範囲を社内ルールで決めておきましょう。
AIに個人情報を入れてよい?どこまで大丈夫かを個人情報保護法から解説
AIマーケティングの始め方
AIをマーケティングに取り入れる流れは以下の4ステップです。
- 時間がかかっている作業を1つ選ぶ
- 下書きや案出しから試す
- 公開前の確認項目を決める
- 効果を測って使う範囲を広げる
時間がかかっている作業を1つ選ぶ
最初に、広告文の作成・記事の構成・メールの下書きなど、時間がかかっている作業を1つ選びます。毎週繰り返す作業ほど、効果を確かめやすくなります。
いきなり全体を変えるより、1つの作業で手応えをつかむことが近道です。
下書きや案出しから試す
最初は、AIの出力をそのまま公開しない使い方から始めます。キャッチコピーの案を10個出させる、記事の構成案を作らせるなど、人が選んで直す前提の作業が向いています。
商品の特徴・ターゲット・伝えたいことを具体的に伝えるほど、使える案に近づくはずです。
公開前の確認項目を決める
AIを使って作ったものを公開する前の確認項目を、あらかじめ決めておきます。確認する項目の例は以下のとおりです。
- 数字や固有名詞などの事実に誤りがないか
- 既存の作品と似ていないか
- 広告であることが分かる表示になっているか
- 自社のブランドや表現の基準に合っているか
確認の担当者を決めておけば、作業が速くなっても品質を保てます。
生成AIの社内ルールの作り方を徹底解説!盛り込む項目とひな形も紹介
効果を測って使う範囲を広げる
AIを使った施策は、作業時間と成果の両方で効果を測ります。作業時間がどれだけ減ったか、広告のクリックや問い合わせがどう変わったかを記録してください。
効果が確かめられたら、対象の作業を広げます。広告の配信では、成果の測定を正しく設定することが、AIによる最適化の前提になります。
AIマーケティングのよくある質問
AIマーケティングについてよく出る疑問への回答は以下の4つです。
- AIを使ったマーケティングとは何ですか?
- 無料で使えるマーケティングのAIはありますか?
- AIでマーケティングの仕事はなくなりますか?
- AIで作った記事は検索で不利になりますか?
AIを使ったマーケティングとは何ですか?
広告文や画像の作成・広告の配信の最適化・データの分析などに、AIを活用することです。文章や画像を作る生成AIと、効果を予測するAIの両方が使われています。
身近な例では、ChatGPTなどで広告文の案を作ることや、Google広告のAIによる配信の最適化が当てはまります。
無料で使えるマーケティングのAIはありますか?
ChatGPTやClaudeなどのチャット型の生成AIには無料のプランがあり、広告文や記事の案を作る用途なら試せます。まずは無料で使い勝手を確かめる方法が手軽です。
ただし、業務で顧客の情報や未公開の情報を扱う場合は、データの扱いが明確な法人向けのプランを選んでください。
AIでマーケティングの仕事はなくなりますか?
案を出す・下書きを作るなどの作業はAIに任せられるようになりましたが、誰に何を伝えるかを決める仕事は人に残ります。伊藤園のパッケージの事例でも、AIが生成した画像を参考に、デザイナーが作り直して完成させています。
AIを使いこなして、企画と確認に時間を使える人の役割は、今後も重要です。
AIで作った記事は検索で不利になりますか?
AIを使ったこと自体が問題になるわけではありません。Googleの公式ガイダンスが問題にしているのは、利用者にとっての価値を付け加えずに大量のページを生成することです。
正確性・品質・関連性を満たし、読者の役に立つ内容であれば、AIを下書きに使った記事でも評価の対象になります。
AIマーケティングは下書きと案出しから始めましょう
AIマーケティングは、広告文や画像の作成・配信の最適化・分析などにAIを活用することです。パルコ・伊藤園・サイバーエージェントのように、制作と効果予測の両方で活用が進んでいます。
一方で、事実の誤り・著作権・広告の表示・検索のスパムには注意が必要です。まずは広告文や記事の下書きなど人が確かめやすい作業から始め、公開前の確認項目を決めて、安全に使う範囲を広げていきましょう。



