AIポリシーとは?盛り込む項目と企業の公開例・作り方の手順を解説

取引先からAIの利用の方針を聞かれたり、他社がAIポリシーを公表しているのを見たりして、自社でも作るべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。社内ルールとの違いも分かりにくく、何を書けばよいのかで手が止まる場面もあるはずです。
この記事では、AIポリシーの意味・社内ルールとの違い・盛り込む項目・企業の公開例・作り方の手順・注意点を、総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインと各社の公表内容に沿って解説します。
記事を読めば、自社のAIポリシーに何を書き、どの順番で作ればよいかが分かる状態です。結論は、AIポリシーは会社がAIをどう使うかの基本の姿勢を示す文書で、小さな会社は短い方針から始めれば足ります。経営者が自分の言葉で方針を書くところから始めましょう。
AIポリシーとは会社がAIをどう使うかを示す基本の方針
AIポリシーの基本は、以下の3つで押さえます。
- AIの開発と利用についての会社の基本の姿勢を示す文書
- 社内ルールは具体的な手順を定める文書
- 国のガイドラインが設定と公開を促している
AIの開発と利用についての会社の基本の姿勢を示す文書
AIポリシーは、会社がAIをどのような考え方で開発し、利用するのかを示す基本の方針です。AI基本方針・AI倫理ポリシー・AI原則など、呼び方は会社によって違います。
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは、会社がAIの管理で目指す到達点をAIガバナンス・ゴールと呼び、例としてAIポリシーを挙げています。
社内ルールは具体的な手順を定める文書
AIポリシーと社内ルールは、役割が違います。違いは、以下の表のとおりです。
| 項目 | AIポリシー | 社内ルール |
|---|---|---|
| 内容 | 基本の姿勢と大切にする価値 | 入力してよい情報や使ってよいツールなどの手順 |
| 読む人 | 顧客・取引先・社員 | 社員 |
| 公開 | 社外に公開する場合が多い | 社内にとどめる |
| 長さ | 数項目の短い文書 | 具体的で細かい文書 |
ガイドラインも、社外への公開を想定した方針を作る段階で、社員向けの行動の基準を非公開で定めて周知することが有用だと説明しています。
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国のガイドラインが設定と公開を促している
ガイドラインは、経営層のリーダーシップのもとでAIガバナンス・ゴールを設定するかを検討し、設定するよう促しています。設定したゴールは、関係者に公開することが期待される内容です。
リスクが軽微であることを理由に設定しない場合も、設定しない事実を理由とともに公開することが期待されています。法的な義務ではありませんが、取引先や顧客への説明の土台になる文書です。
AIポリシーに盛り込む項目
AIポリシーに盛り込む主な項目は、以下の5つです。
- 人間中心の考え方
- 公平性と人権の尊重
- 安全性とセキュリティの確保
- プライバシーの保護
- 透明性と説明の責任
人間中心の考え方
多くのAIポリシーが最初に掲げるのは、AIは人のために使うとの考え方です。ソフトバンクのAI倫理ポリシーは、AIを人間の意思決定の補助として利活用し、人間が適切に関与することを原則の1つ目に置いています。
AI事業者ガイドラインも、共通の指針の1つ目に人間中心を挙げています。
公平性と人権の尊重
AIの判断の偏りによって、特定の人が不利に扱われないようにする項目です。リコーグループのAI活用基本方針は、AIを活用した判断の結果に偏りが生じる可能性を認識し、偏りが生じないよう努めるとしています。
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安全性とセキュリティの確保
AIが人の生命や財産を脅かさないようにし、不正な利用や攻撃から守る項目です。ソフトバンクのポリシーは、AIのリスクを見極めて必要に応じて利用を制限し、運用のあとも監視を続けるとしています。
プライバシーの保護
個人の情報を含むデータを、法令と社内の規程に沿って扱う項目です。すでにプライバシーポリシーがある会社は、既存のポリシーに沿ってデータを扱うと書く形もあります。
透明性と説明の責任
AIの判断の結果をどう使っているのかを説明できるようにする項目です。ソフトバンクのポリシーは、明確な責任の体制のもとでAIを審査し、記録を管理するとしています。
人材の育成や法令の遵守を項目に加えるのも、1つの形です。三菱電機グループのAI倫理ポリシーは、AIの発展と人材の育成・法令の遵守を含む7つの項目で構成されています。
AIポリシーを公開している企業の例
AIポリシーを公開している企業の例は、以下の表のとおりです。
| 企業 | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| ソフトバンク | ソフトバンクAI倫理ポリシー | 2022年7月に制定・6つの項目 |
| NEC | NECグループ AIと人権に関するポリシー | 人権の尊重を最優先にする指針 |
| パナソニックグループ | AI倫理原則 | 5つの条文と運用の委員会 |
| 三菱電機グループ | AI倫理ポリシー | 7つの項目 |
| リコーグループ | AI活用基本方針 | 4つの方針 |
公開例のポイントは、以下の3つです。
- 経営の理念と結びつけて書かれている
- 既存の人権やプライバシーの方針と整合させている
- 方針を運用する体制とセットになっている
経営の理念と結びつけて書かれている
公開されているポリシーに共通するのは、会社の理念と結びつけて書かれている点です。電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめた資料によると、パナソニックグループは、経営理念の実践のために5つの条文からなるAI倫理原則を定めています。
AI事業者ガイドラインも、AIに関するゴールを、会社の理念や経営上のゴールと矛盾しないよう検討することを求めています。
既存の人権やプライバシーの方針と整合させている
ソフトバンクのポリシーは、すでに定めている人権ポリシー・プライバシーポリシー・情報セキュリティポリシーと矛盾しない形で、AIの倫理を補うと明記しています。リコーグループも、人権方針やデータプライバシーポリシーと並ぶ方針として策定しています。
既存の方針がある会社は、一から作らずに既存の方針を土台にする方法が近道です。
方針を運用する体制とセットになっている
公開している会社は、方針を作るだけでなく、運用する体制も整えている点が共通です。パナソニックグループは、原則を運用するAI倫理委員会を設置し、開発の現場でのリスクの点検と全従業員への教育を進めています。
NECは、ポリシーを実践するための全社の規程を制定し、責任者や取締役会との関係を明確にしています。
AIポリシーの作り方の手順
AIポリシーの作り方の手順は、以下の5つです。
- 自社のAIの使い方とリスクを確かめる
- 経営者が基本の姿勢を言葉にする
- 国のガイドラインの指針と照らし合わせる
- 社内で共有して内容を磨く
- 公開して定期的に見直す
自社のAIの使い方とリスクを確かめる
最初に、自社がAIをどの業務で使っているのかと、想定されるリスクを確かめます。ガイドラインは、会社の規模と扱うAIのリスクに応じて、柔軟に設定するよう説明しています。
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経営者が基本の姿勢を言葉にする
次に、経営者が、自社としてAIをどう使うのかを言葉にします。ガイドラインの実践例には、従業員の少ない会社の例が載っています。
経営者が経営理念と結びつけた方針を描き、現場の担当者と共有した例です。A4で1枚程度の内容を、自社のAIガバナンス・ゴールにしたと紹介されています。
国のガイドラインの指針と照らし合わせる
書いた方針を、AI事業者ガイドラインの共通の指針と照らし合わせます。共通の指針は、人間中心・安全性・公平性・プライバシー保護・セキュリティ確保・透明性・アカウンタビリティなどの10項目です。
ガイドラインは、共通の指針が十分に機能すると判断した場合、自社のゴールの代わりに共通の指針をゴールにしてもよいと説明しています。
社内で共有して内容を磨く
方針の案を社内で共有し、現場の意見を聞いて直す段階です。実践例では、実際に起きた問題を経営層と従業員で共有しながら、方針を磨いたと紹介されています。
部門ごとにAIへの関わり方が違う会社は、全社の研修や相談の窓口を通じて、合意を作っていく進め方もあります。
公開して定期的に見直す
できあがった方針は、自社のサイトなどで公開します。ソフトバンクのポリシーは、各国の指針や技術の発展などを踏まえて、必要に応じて見直すと明記しています。
技術と法律は変わり続けるため、年に1回などの頻度で見直す機会を決めてください。
AIポリシーを作るときの注意点
AIポリシーを作るときの注意点は、以下の3つです。
- 作って終わりにしない
- 実態と合わない内容を書かない
- 他社の文面をそのまま写さない
作って終わりにしない
方針を公開しても、社員が知らなければ意味がありません。社内ルール・教育・点検とつなげて、方針を日々の業務に落とし込んでください。
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実態と合わない内容を書かない
実際にはできていない取り組みを方針に書くと、社外への説明と実態がずれます。公開した方針は、取引先や顧客から守られているかを問われる前提で書いてください。
他社の文面をそのまま写さない
他社のポリシーは参考になりますが、事業の内容とAIの使い方は会社ごとに違います。項目の立て方を参考にしつつ、自社の事業に合う言葉で書きましょう。
AIポリシーのよくある質問
AIポリシーについてよく出る疑問は、以下の4つです。
- AIポリシーとは何ですか?
- AIポリシーは必ず作る必要がありますか?
- 中小企業でもAIポリシーは必要ですか?
- AIポリシーと社内ルールはどちらを先に作ればよいですか?
AIポリシーとは何ですか?
会社がAIをどのような考え方で開発し、利用するのかを示す基本の方針です。AI基本方針やAI倫理ポリシーとも呼ばれます。
AIポリシーは必ず作る必要がありますか?
法的な義務ではありません。AI事業者ガイドラインは、設定するかどうかを検討し、設定しない場合は理由とともに公開することが期待されるとしています。
中小企業でもAIポリシーは必要ですか?
AIを業務で使うなら、短い方針でも作っておくことをおすすめします。取引先から方針を聞かれたときに、説明に使える文書です。
ガイドラインには、小規模な会社がA4で1枚程度の方針を定めた例が載っています。
AIポリシーと社内ルールはどちらを先に作ればよいですか?
情報の流出を防ぐ入力のルールは、すぐに必要です。社内ルールを先に整え、続けて基本の姿勢をAIポリシーにまとめる順番が現実的です。
AIポリシーは経営者が方針を言葉にすることから始めましょう
AIポリシーは、会社がAIをどう使うかの基本の姿勢を示す文書です。人間中心・公平性・安全性・プライバシー・透明性などの項目を、経営の理念と結びつけて書きます。
まずは、経営者が自社のAIの使い方の方針を短く言葉にしましょう。国のガイドラインの共通の指針と照らし合わせ、社内で磨いてから公開してください。



