AI人材とは?3つの種類と必要なスキル・育成と採用の進め方を解説

AIを業務に取り入れたいのに、社内に詳しい人がおらず、誰に任せればよいのか悩んでいないでしょうか。AI人材を採用しようにも、どんなスキルを持つ人を探せばよいのかが分からない方も多いはずです。
この記事では、AI人材の意味・3つの種類・必要なスキル・不足の現状・育成の方法・採用のポイント・役立つ資格を、情報処理推進機構(IPA)や経済産業省の公開情報に沿って解説します。
記事を読めば、自社に必要なAI人材の姿と確保の方法を決められる状態です。結論は、多くの企業で先に必要なのは、AIを開発する人ではなく業務でAIを使いこなす人です。推進役を決めて社内で育てる進め方が、現実的な近道になります。
AI人材とはAIを作る人と使いこなす人の総称
AI人材の基本は、以下の3つで押さえます。
- AI人材に決まった定義はない
- IT人材やDX人材とは求められる役割が違う
- 生成AIの普及で使いこなす人の重要性が増した
AI人材に決まった定義はない
AI人材は、AIを開発したり、AIを業務や事業に活用したりできる人材を指す言葉です。法律や規格で決まった定義はありません。
IPAは、AIを推進するうえで多くの企業が直面する課題が人材だと説明しています。AI自体を開発する人材だけでなく、AIを活用してサービスを提供する人材や、業務の中でAIを使いこなす人材も不足しているとの認識です。
AIを作る技術者だけを指す言葉ではない点を、最初に押さえてください。
IT人材やDX人材とは求められる役割が違う
IT人材は、情報システムの開発や運用を担う人材を広く指します。AI人材は、IT人材の中でもAIの技術や活用に強みを持つ人材と、IT部門以外でAIを活用する人材の両方を含みます。
DX人材は、デジタル技術で事業や業務を変革する人材です。経済産業省とIPAのデジタルスキル標準は、DXを推進する人材の役割を、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなど6つの類型で定義しています。
AIはDXの手段の1つのため、AI人材はDX人材の一部と重なります。
DXとAIの違いとは?関係と活用の進め方・日本企業の現状を解説
生成AIの普及で使いこなす人の重要性が増した
生成AIの登場で、プログラムを書けない人でも、言葉で指示してAIを使えるようになりました。AIを活用できるかどうかは、開発の技術よりも、業務の課題を見つけてAIに任せる力に左右されます。
経済産業省は2023年8月に、すべてのビジネスパーソン向けのDXリテラシー標準に、生成AIに関する記載を加えました。2024年7月には、DXを推進する人材向けの標準にも、生成AIに関する行動の例が追加されています。
AI人材の3つの種類
AI人材は、役割で以下の3つに分けられます。
| 種類 | 主な役割 | 代表的な職種 |
|---|---|---|
| AIを開発する人材 | AIの仕組みやシステムを作る | AI研究者・AIエンジニア・データサイエンティスト |
| AIの活用を企画する人材 | AIを使う事業や業務を設計して導入を進める | AIの企画担当・プロジェクトの責任者 |
| 業務でAIを使いこなす人材 | 日々の仕事にAIを取り入れる | 営業・事務・企画などの担当者 |
3つの種類の内容は、以下のとおりです。
- AIを開発する人材は仕組みやシステムを作る
- AIの活用を企画する人材は導入を進める
- 業務でAIを使いこなす人材は現場の成果を出す
AIを開発する人材は仕組みやシステムを作る
AIを開発する人材は、AIの研究や、AIを組み込んだシステムの実装を担います。機械学習の知識とプログラミングの技術が必要な、専門性の高い人材です。
IPAの「DX動向2025」によると、日本企業ではAI研究者は自社に必要ないと答えた割合が56.4%でした。AIを活用したシステムを実装できるAI開発者も、40.7%が自社に必要ないと答えています。
IPAは、日本にはAIを自社で開発するのではなく、事業の企画や業務への適用に活用していく傾向があると分析しました。
AIの活用を企画する人材は導入を進める
AIの活用を企画する人材は、どの業務にAIを使うかを決め、導入の計画を立てて進めます。業務の知識とAIの基礎知識の両方を持ち、現場と経営をつなぐ役割です。
外部のサービスや開発会社を使う場合も、何を作るかと何を任せるかは社内で決めます。多くの企業で、最初に確保したい人材は推進役です。
業務でAIを使いこなす人材は現場の成果を出す
業務でAIを使いこなす人材は、資料の作成・調査・顧客への対応など、自分の仕事にAIを取り入れる人です。特別な職種ではなく、すべての社員が対象になります。
AIの効果は、一部の詳しい人だけが使っても広がりません。現場の一人ひとりが使える状態にすることが、会社全体の成果につながります。
AI人材に求められるスキル
AI人材に求められるスキルは、以下の5つです。
- AIの仕組みと限界を理解している
- 業務の課題をAIに任せる形に整理できる
- データを集めて整える方法を知っている
- リスクと法律の基礎を押さえている
- 開発を担う人は機械学習とプログラミングを扱える
AIの仕組みと限界を理解している
最初に必要なのは、AIが何を得意とし、何を苦手とするかの理解です。生成AIは、事実と異なる内容をもっともらしく答えることがあります。
限界を知っていれば、AIの回答を確かめるべき場面を判断できます。DXリテラシー標準も、DXで活用されるデータや技術の知識と、利活用の方法を学ぶ構成です。
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業務の課題をAIに任せる形に整理できる
AIを活用するには、業務のどこに時間がかかっているかを見つけ、AIに任せる作業として切り出す力が必要です。AIへの指示の文章であるプロンプトを書く力も含まれます。
業務を知っている人ほど、効果の大きい使い道を見つけられます。現場の経験は、AI人材の強みです。
データを集めて整える方法を知っている
AIに自社の情報を参照させるには、文書やデータが整理されている必要があります。紙や個人のパソコンにしかない情報は、AIが使えません。
デジタルスキル標準にも、データの安全性と信頼性を確保して活用を進めるデータマネジメントの類型が設けられています。
リスクと法律の基礎を押さえている
AIの利用には、情報の漏えい・著作権の侵害・個人情報の扱いなどのリスクがあります。入力してよい情報と、生成物を使う前の確認事項を知っておく必要があります。
IPAの調査では、生成AIの効果やリスクに関する理解の不足を課題に挙げた日本企業が48.6%でした。
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開発を担う人は機械学習とプログラミングを扱える
AIを開発する人材には、機械学習やディープラーニングの理論と、Pythonなどのプログラミングの技術が求められます。統計や数学の基礎も必要です。
自社でAIを開発しない企業では、全員が身につける必要はありません。必要な場面では、外部の専門家と組む方法もあります。
日本でAI人材が不足している現状
AI人材の不足について、公的な調査と推計から分かることは以下の3つです。
- 日本企業はAI人材が種類を問わず不足している
- 2040年にAIやロボットを活用する人材が約340万人不足する推計がある
- 事務職は約440万人が余る推計で学び直しが課題になる
日本企業はAI人材が種類を問わず不足している
IPAの「DX動向2025」は、日本・米国・ドイツの企業にAI人材の充足度を尋ねています。日本では、人材の種類を問わずAI関連の人材が不足している結果でした。
米国とドイツでは、すべての種類で「十分いる」と「まあまあいる」の合計が過半数を超えています。同じ調査で、DXを推進する人材が不足していると答えた日本企業は8割を超えました。
2040年にAIやロボットを活用する人材が約340万人不足する推計がある
経済産業省は2026年1月の資料で、2040年の就業構造の推計を示しました。AIやロボットの利活用を担う人材は、需要の782万人に対して供給が443万人で、約340万人が不足する可能性があるとしています。
資料は暫定版で、数値は精査中と注記されています。推計では、AIやロボットの活用と学び直しが進めば、全体では大きな人手不足は生じないともされました。
不足するのは人数の合計ではなく、AIを活用できる人材だと読み取れます。
事務職は約440万人が余る推計で学び直しが課題になる
同じ推計では、AIやロボットによる省力化で、事務職が約440万人余る可能性が示されています。大学や大学院の文系を卒業した人材も、約80万人が余る見通しです。
余ると見込まれる職種から、不足する職種へ移れるかどうかが課題になります。今いる社員が、AIを使いこなす人材へ学び直す取り組みの重要性が増しています。
AI人材を育成する方法
AI人材は、以下の5つの手順で育成します。
- 自社に必要な人材像を決める
- 全社員にAIの基礎を学ぶ機会を作る
- 推進役を選んで実務で育てる
- 学んだことを業務の流れに組み込む
- 外部の研修と助成金を活用する
自社に必要な人材像を決める
最初に、自社がAIで何を実現したいかを決め、必要な人材の種類と人数を整理します。AIを開発しない企業であれば、育てる対象は推進役と使いこなす社員の2つです。
デジタルスキル標準は、役割ごとに必要なスキルを定義しています。人材像を言葉にするときの参考にできます。
全社員にAIの基礎を学ぶ機会を作る
次に、全社員がAIの基礎と利用のルールを学ぶ機会を作ります。LINEヤフーは、リスクの管理とプロンプトの技術に関するeラーニングの試験の合格を、生成AIを利用する条件にしました。
使う前に学ぶ内容をそろえると、安全に使える人を短い期間で増やせます。
AI研修とは?法人向けの内容・選び方と費用の実例や助成金の条件を解説
推進役を選んで実務で育てる
各部署から、業務に詳しくAIに関心のある人を推進役に選びます。推進役は、部署の業務でAIの使い道を試し、うまくいった使い方を周りに広めます。
横須賀市は、ChatGPTの全庁での実証に合わせて、職員向けの研修とプロンプトのコンテストを企画しました。実際の業務で試す機会が、育成の中心になります。
学んだことを業務の流れに組み込む
研修だけでは、AIの利用は定着しません。HubSpot Japanの営業職への調査では、生成AIを週に1回以上使う人の割合は、研修や勉強会を行う会社で56.9%でした。
業務の流れにAIを組み込んでいる会社では、74.8%に上がります。会議の後はAIで議事録を作るなど、手順の中にAIを入れてください。
外部の研修と助成金を活用する
社内に教えられる人がいない場合は、外部の研修を使います。自社の業務に合わせた演習がある研修は、学んだ内容を仕事に移しやすい点が利点です。
研修の費用には、国の助成金を使える場合があります。対象の条件と申請の順序は、制度のページで確かめましょう。
AI研修の助成金を徹底解説!対象条件と申請の流れ・注意点も紹介
AI人材を採用するときのポイント
AI人材を採用するときのポイントは、以下の3つです。
- 任せる仕事を先に決める
- 開発者より先に推進役を確保する
- 外部の専門家と組む方法も検討する
任せる仕事を先に決める
採用の前に、入社した人に何を任せるのかを具体的に決めます。任せる仕事と使えるデータが決まっていないと、専門性の高い人を採用しても力を発揮できません。
求人には、対象の業務・扱うデータ・期待する成果を書くと、応募する側も判断しやすくなります。
開発者より先に推進役を確保する
AIを自社で開発しない企業が最初に探すべき人は、AIの活用を企画して進められる人です。業務の知識とAIの基礎知識を持つ人は、社内の異動や育成でも確保できます。
社内の業務を知る人をAIの推進役に育てる方法は、外から採用するより早い場合があります。
外部の専門家と組む方法も検討する
AIを開発する人材は、採用の競争が激しい職種です。常に必要な仕事量がない場合は、開発会社や顧問などの外部の専門家と組む方法が現実的です。
外部に任せる場合でも、目的を決めて成果を確かめる役割は社内に残してください。
AI人材の育成に役立つ資格
AI人材の育成に使える資格を整理すると、以下の表のとおりです。
| 資格 | 実施団体 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ITパスポート試験 | IPA | ITとAIの基礎を学びたいすべての社員 |
| G検定 | 日本ディープラーニング協会 | AIの活用を企画する人・推進役 |
| E資格 | 日本ディープラーニング協会 | AIを実装するエンジニア |
| 生成AIパスポート | 生成AI活用普及協会 | 業務で生成AIを使う人 |
各資格の特徴は、以下の4つです。
- ITパスポート試験はITとAIの基礎を広く学べる
- G検定はAIを事業に活用する知識を問う
- E資格はAIを実装する技術を認定する
- 生成AIパスポートは生成AIの基礎とリスクを学べる
ITパスポート試験はITとAIの基礎を広く学べる
ITパスポート試験は、IPAが実施する情報処理技術者試験の1つです。IPAは、DXリテラシー標準の知識とスキルを身につけるのに特に有用な試験と位置づけています。
出題の範囲を示すシラバスには、生成AIに関する項目と用語が追加されました。全社員の基礎づくりに使いやすい資格です。
G検定はAIを事業に活用する知識を問う
G検定は、日本ディープラーニング協会が実施する検定です。受験の資格に制限はなく、オンラインの試験は100分で145問程度が出題されます。
2026年10月時点の受験料は、一般が13,200円(税込)です。AIの活用を企画する人や推進役の学習の目標に向いています。
E資格はAIを実装する技術を認定する
E資格は、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選んで実装する力を認定する資格です。受験するには、協会が認定した教育プログラムを修了している必要があります。
2026年10月時点の受験料は、一般が33,000円(税込)です。AIを開発する人材向けの資格のため、全社員が目指す必要はありません。
生成AIパスポートは生成AIの基礎とリスクを学べる
生成AIパスポートは、生成AI活用普及協会が実施する資格試験です。公式サイトでは、累計の受験者数が14万名を超えたと案内されています。
生成AIの基礎知識と、利用するときの注意点を学ぶ内容で、業務でAIを使いこなす人の入口に向いています。
AI人材のよくある質問
AI人材についてよく出る疑問は、以下の5つです。
- AI人材とはどういう人材ですか?
- AI人材はいらないと言われるのはなぜですか?
- 文系でもAI人材になれますか?
- AI人材になるには何から始めればよいですか?
- 中小企業でもAI人材を育てられますか?
AI人材とはどういう人材ですか?
AIを開発する人材・AIの活用を企画する人材・業務でAIを使いこなす人材の総称です。AIを作る技術者だけでなく、AIを仕事に活用できる人も含みます。
AI人材はいらないと言われるのはなぜですか?
AIを自社で開発しない企業では、AIの研究者や開発者を抱える必要がないことが理由です。IPAの調査でも、AI研究者は自社に必要ないと答えた日本企業が56.4%ありました。
一方で、AIの活用を企画する人材と業務で使いこなす人材は、どの企業にも必要です。必要な人材の種類を分けて考えてください。
文系でもAI人材になれますか?
なれます。AIの活用を企画する役割と、業務で使いこなす役割には、プログラミングの技術よりも業務の知識と課題を整理する力が求められます。
生成AIは言葉で指示して使えるため、文章で考えを整理する力は強みです。
AI人材になるには何から始めればよいですか?
まずは、生成AIを自分の仕事で毎日使ってみることから始めます。資料の下書きや調査などの身近な作業で試すと、AIの得意と苦手をつかめるはずです。
基礎を体系的に学びたい場合は、ITパスポート試験や生成AIパスポートの学習が入口になります。
中小企業でもAI人材を育てられますか?
育てられます。AIを開発する人材を抱える必要はなく、業務に詳しい社員を推進役に選び、生成AIのサービスを使いながら育てる方法が現実的です。
研修の費用は、国の助成金の対象になる場合があります。
AI人材は推進役を決めて社内で育てましょう
AI人材は、AIを開発する人だけでなく、活用を企画する人と業務で使いこなす人を含む言葉です。日本ではAI人材が種類を問わず不足しており、今いる社員の学び直しが重要になっています。
まずは自社に必要な人材像を決め、各部署から推進役を選びましょう。全社員が基礎を学び、業務の流れの中でAIを使う仕組みを作ることが、AI人材を増やす近道です。



